「…いない」









「は?」












「いや…此処に入る前に銀髪の…多分この店の者だと思うのだが…」







「銀髪?…ああ!!それなら”月穂”でございましょう」




「ツキホ?」




「ええ。さすがに御眼が高い。アレはまだ客を採ったことが御座いませんで。月の稲穂と書いて”月穂”と申します」





「月穂…」




「今日はそちらになさいますか?」



















「…あぁ」















確かに存在したことに少なからず安堵を憶え、そして戸惑う。




ひとたび垣間見ただけの月をこの手に掴まえてどうしようと云うのだろう。



ましてや、”買って”手に入れるなど―






だが”月穂”の初めての”客”であることを喜んでいる自分がいた







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