「―…どうして」 どうして、 どうして、 君は泣いてる? どうして、 どうして、 君はこんなにも冷たい? どうして 俺を見てはくれない? 失ったものは。 守りたかったものは。 失いたくなかった、守りたかった、大切な君。 鮮血に染まった部屋はまるで、椿の花弁を敷き詰めたような紅。 その中で 細くなってゆく君の吐息をただ感じて そうして其れが途絶えた時、 どんなに強く抱き締めても目を覚ますことのないイザークの手首から流れた紅は 先程までの光景が嘘の様に 赤黒く、どろりとしていて 今宵の吊るされた様な紅月が一層、イザークを鮮やかに魅せるから その手首にこびり付く枯れた椿は、 綺麗な彼には酷く不似合いだった。 「…初めてイザークを見た時、月みたいだと、守りたいと、…触れたいと…そう思ったよ」 夕闇に染まり始めた街の中、 眸を奪われ この精神 を奪われ 君の自由を奪った 触れ合った想いと想い。 君の魂 は此処に亡くとも こんなにも在々と思い出せるのに もう、思い出は増える事無く いつか、褪せてしまうのだろう それならばいっそ―次へ
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