届いた手紙に顔が綻び、内容に落胆する。




『しばらく其方へは行けなそうなんだ。すまない。

愛してるよ』



「…本当に弱くなったな、俺は」







最後の一文にどれだけ救われてることだろう。















「…とうとう飽きられたか?」








自分とアスラン以外の声が響くなど、『此処』を与えられて以来無かった。


驚き振り返るとそこには嫌な笑みを浮かべた店主が立っていて

"ザラ"が客となり、羽振りが更に良くなったのか最近酷く酔っていることが多い店主。

今夜も例外ではないのは明白だった。


ゆっくりと足を進めてくる事にざわりと危機感を覚える。











思わず後退るイザークに尚も笑いながら、変わらず遅い動作でイザークの前で片膝を付いた。







「本当に美しいな、お前は」


「・・・・・・」


「ザラの坊ちゃんもいい目をお持ちのようだ…ここまで入れ込むとは思わなかったが。
…まさか、あの坊ちゃんがお前を身請けしてくれるなんて思っちゃいないだろうな?」




「っ…そんな、こと」



あるはずないのは、わかってる







「解ってるならいい…ならば、月穂。お前が媚を売るべきは誰なのかも解るな?」



「・・・・・・」



「その白い手も足も、髪の一筋さえも…誰のものだ?」




する、と裾から入り込む手は不躾に足を撫でて

アスランとは余りに違う感触に吐き気さえこみ上げた






―ここでコイツに逆らったら、生きていけない。






「本当に美しくなった…男を知ったからか?お前の水揚げは私でありたかったと、少し後悔してるぞ」



汚らわしい笑み。


―この手を払い除けてしまえたら








「さぁ月穂…その口で言ってみろ。お前の所有者は、誰なのか」









言いたくない
 
  言いたくない
  
    言いたくない

























「…貴男の、ものです」














眩暈と、吐き気





自分に。














よく言えた、と肌を這っていた手で頬を撫でて
部屋を出て行く背中を乱れた着物姿で見送った。




腿に、肩に、頬に残る、アスランとは違うもの。










ずっと手の中で握り締めていた手紙はくしゃくしゃで


歪んだ『愛してる』の文字に涙が溢れた。











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