「…来ない、な」


大きな、大きな夢を約束した。

あの日から二週間が経とうとしていた。


もう雪も少なく、積もることも無くなって。



雪解けと共に、あの約束も解けてしまうのではないかと


イザークは小さく肩を震わせて己の身体を抱き締めた。





「…だいじょうぶ…ずっと、いっしょ」







願う、請う、声。













「月穂!!!!!」


タンッ、と勢いよく開かれた襖と共に、店主の怒鳴り声。

"あの日"以来酔いにまかせてこの部屋へしばしば来ていた店主も、アスランがまた来店したことでイザークへと触れるどころか、
部屋へ来ることも無くなっていた。


些か驚き、訝しげに眉を寄せながらイザークは振り返る。

そして見た店主は、怒りを顕わに震えていた。




次の瞬間、






パァンッ







一瞬、訳が判らなかった。


ただ、酷く左頬が熱い。




呆然としたままの"月穂"に罵声が飛ぶ。





「…っこの娼ごときが!!!なんてことを!うちの店を潰す気か、恥を知れ!!身分を弁えろ!!!」



漸く、自分が叩かれたことを理解する。

倒れこんだまま、目の前の男を見上げれば、ずっと大声で罵倒し続けてくる。

イザークには何を言われているのかが全く解らなかった。


ただただ、頬を押さえて見上げた。




突然に髪を摑まれ、畳に叩きつけられた。





「ザラ様からのご処罰が下されるまで、大人しくしてろ!分かったな!!!」










なん、だ?


ザラ?





したたかに打ち付けた肩が痛む。


頬もまだじんじんする。





頭がぐらぐらして、思考がぐるぐる、する。









「あいつの…父、親…か・・・・・・?」













―イザークしか俺を倖せに出来ないんだから












大丈夫。



許されなかったのなら、一緒に逃げればいいだけだ。






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