掴みかかった手は難なく捉えられ、間近に見える男の顔は歪むように笑った。




「憎いか?殺したいか?お前から全てを奪った私が」

「…っ当たり前だ!!貴様さえ、貴様さえ居なければ…!!」

「居なければ?」

「父上も、母上も…死ななかった!」

「…そして自分は躯を売らなくても済んだのに、と?」

「き、さま…!!!!」

「薄汚い売女が。…いや、女ですらないお前は"商品"だな。気まぐれな貴族や男色家の玩具だ」

「っそれでも…」

「私達…アスランとは、住む世界が違う」



叩きつけられる容赦無い言葉達。

ただ睨み返すしか出来ないイザークを引っ張り上げ、男は破顔する。





「私を殺したがっているのはお前だけではない。…そして、誰も無意味に死んでゆく」




いきなり手を解放され、床に崩れ落ちたイザークに尚も男は喋り掛ける。
諭すように、優しく。
だが、背筋が凍るほど冷たい声色。


「・・・・・・・・」

「此処まで登り詰めるのに、お前の父だけの犠牲で済む筈が無かろう?」

「…どれだけ、俺達のように堕としてきた…!?」

「さあ…忘れたな。"下"の者達のことなど」


顔が熱いのは怒りの所為だ。
握った拳に食い込む爪も痛くない。

一々、まるで此方の神経を逆なでするかのような物言いに肩が震えるのを抑えられない。



発せられた声は自分のものでないように低く掠れていた。






「…殺して、やる…




 殺してやる殺してやる殺してやる…!!!!」







「…出来るものなら、な」



その言葉を合図に、


狂った歯車は加速した―







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